たこ焼き

たこ焼きは、ちょぼ焼き、ラヂオ焼きが原型といわれる。
ちょぼ焼きは名前のとおり、たこ焼きより小さく、ちょぼちょぼとしたくぼみのついた鉄板で焼かれたらしい。ひょっとしたら銅版かもしれない。
そして、ラヂオ焼きはこんにゃくやスジ肉を具として入れていたらしい。
そこに明石焼きをまねてたこを入れるようになった。
初期のころには、たことこんにゃくとスジ肉を入れている店もあった。
関西ではお好み焼きとたこ焼きは子供のころから焼く訓練を受ける。
昔は「じゃりンこチエ」に出てくる地獄組の親分のお好み焼き屋のように
でかい鉄板を囲んでカウンターがあり、
客は鉄板を囲んで座る形式の店が主流だった。
そういう店では、小学生だろうと大人であろうと
自分で焼くことになっている。
材料も運んでくれるし、他のサービスは普通の飲食店と同じだが
調理だけはセルフサービスである。
考えてみると変な話だ。
すし屋でネタとシャリを持ってきて自分で握れとは言われない。
フランス料理なんかになるともうどうしていいかわからないだろう。
まともな商売じゃない。
お好み焼き屋デビューはたいていの子供にとって苦いものとなる。
一番の難関はお好み焼きをひっくり返すことだ。
生まれて初めて料理をするような年齢の子供がやるのである。
床に落としたり、落とさなくてもばらばらになったり
悲惨なことになる。
それでも店のおばさんは
「あ〜あ、ばらばらになってもうたねぇ」
などといって笑っている。ほったらかしである。
まともな商売じゃねぇ。
グチャグチャになったお好み焼きを2〜3度食べて
うまく焼けるようになる。
その次の難関は、コテあるいはテコあるいはヘラで
お好み焼きを綺麗に切ることである。
豚たまが一番難しい。
豚バラスライスがカリカリになっているため
豚だけが切れずに生地と分離してしまう。
カッターナイフで切ったようにスパッと切れるようになるには
やはりばらばらになったお好み焼きを何度か涙とともに飲み込まなければならない。
たこ焼きはというと
お店では焼いて売っているが
家庭でする場合は
やはり自分で焼くのが基本である。
やってみればわかるが、焼く係を決めるとその焼く係りは自分が食べる暇がない。
たこ焼きを焼くのは結構忙しい作業なのだ。
たこ焼きも、ひっくり返すのが一番難しい。
しかも中を空洞にふっくらと焼き上げられるようになるには
熟練が必要だ。
それを子供にやらせるのだ。
まともじゃねぇ。児童虐待である。
ということで、関西、特に大阪下町で育ったものは
お好み焼きもたこ焼きも焼くのがうまいのである。
今はそうじゃないだろうと思うけど。
最近のたこ焼きはお持ち帰りに最適化されているようで
中まで粉の詰まった重たいものばかりだが
本来のたこ焼きは中を空洞に焼き上げなければならない。
空気で膨らんでるだけなのでさめるとしぼんでしまう。
そのために現在のような中身の詰まったたこ焼きばかりになったのだろう。
でもあれはおなかばっかり膨れておいしくない。