今年はありがとうございました。


まあ、いるかいないか判らない読者の皆様に
一応ご挨拶おば。
もうあさってはお正月でござりまするなあ。
初詣といえば印象に残る思い出がある。
何年も前のことになるが
家族で初詣に行った帰り
駅のホームで電車を待っていた
たまたまベンチが空いていたのでみんなで座って
たわいもない話をしていた。
なんとなく人の気配に見てみると
中年の女性が俺の横に立っているのに気付いたので
立ち上がってどうぞと席を譲ると、その女性は俺に会釈して座った。
そしてまたみんなで話しているうちに特急電車がホームを通過しようとやってきた。
その瞬間、さっきの女性が突然立ち上がり走ってくる電車に向かって駆け出した。
あっというまもなく、電車に吸い込まれていくのが見えた。
ホームがざわめく。
ちょうど俺たちは目の前で目撃してしまったわけだ。
席を譲られたのがショックだったのだろうか。
そしてそのことは新聞の小さな囲み記事にすらならなかった。
その女性にどんな人生があったのかは知らない。
それもこれも消えてしまった。
いや、その後のことはわからないので命は取り留められたのかもしれない。
どちらにせよ悲しい話だ。
このことを思い出すと
寝覚めが悪いというか後ろめたいというか
複雑な気持ちになる。
全く普通な感じでそんな様子はなかった。
崖の上で思いつめたようにたたずんでいるとかだったらわかりやすいのだが。
俺は立って家族と向かい合う形で、ホームに背を向けていた。
そして、振り返ったときにはもう飛び込んでいた。
俺の感がもう少しよければタックルしてでも止めていたのにと思うと
どうにもたまらない。